わたしの前から突然、消えたモノ…
カレがしゃべる。

もしかして、昨日のこと怒ってる?

昨日のこと…

あ、あの顔を近づけたことか。
魅力的って言葉で、迫ったことよね。

ううん、そんなことないですよ。

ほんとに?
気になって昨日、なかなか寝れなくて。 よかった、安心したよ。

と嬉しそうなカレの声。

つか、謝ってるのも喜んでるのも
心があんまこもってないんだけどねー。

なんか…

わたし声に敏感になったんだろうか。
かわいた声に聞こえるんだよね、それ。

でも、周りから見えない視線を感じる。

他の子たちにやり取りを見られてる。
やっぱり、二人はみんなの注目の存在。

そしてわたしはそのひとり。

ここはきっちり演じないとだめ。

とびっきりのニセ笑顔を
カレのほうに向け、手を振りながら…

じゃ、帰りに正門前で待ってますねっ、

と言い残して教室に戻った。

トモダチが言う。

やっぱり、かっこいいよねー。
あの優しい笑顔にとろけそうー。

笑顔?
そんなもの見えてないし。

あと、あの言葉ぜんぶがなんか…

うそっぽい。

顔が見えないと人間不信になるのかよ。
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