眠れぬ森の美女
「王さま王さまあ」

「…いそがしい奴だな。」

王様のもとへ、賢者がほてほてと走ってきました。

走ったといっても、賢者は運動がとことん苦手なので、

歩くのとあまりかわらないのですが。

「やっとわかりましたよ。姫さまの眠れぬ病は、寂しさのためです。」

「城のものがいるではないか。」

「けれど、むりやり学校をやめさせたでしょう?」

「基礎学力はともかく、

受験テクニックなどうちの娘には必要ない。

もっと学ばねばならんことがあるのだ。」

王様のおっしゃることはもっともです。

けれど、賢者は知っていました。

姫様がいつも、それはそれは楽しそうに、

学校での話を城の者に話していることを。

「でも、姫さまは哀しいほど集団生活に順応されているのです。

さっき『わたしはなにをしたらいい?』ときいたでしょ。」




「…だが学校へ行くのはやはり認められん」

「そうではありません。ただ王様に一役買っていただきたいのです。」

「ううむ…」

「昔は、演劇部だったと聞きました」

「…よく調べたな。」

「これでも賢者ですから。

では私は姫さまのお供として参ります。

王様は、自分のことは自分でやってくださいね」

「なんだその放任主義の母親みたいな」

「もう大人なんですから♪」

「…わかった。はやくいけ。」

「それではまた後ほど~」

内容がなかったように見えますが、

王様と賢者はちゃんと今後の打ち合わせをしたのですよ。

こうして、姫様と賢者の二人は、

眠れぬ森へと向かったのです。
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