矢刺さる先に花開く
「と…殿?その子は……」
経子の部屋を訪れた重盛が伴っていたのは、まだ小さな、二歳ほどの子供だった。
「……私の、子だ」
「!?」
「平家は今、力を増しておる。そこへ取り入ろうと、ある公卿が私に娘を差し出してきて…」
経子は驚愕のあまり声も出なかった。
「その娘が子を産んだことを知った時は、そなたとの既に縁が決まっておった。今まであちらで育ててもらっていたのだが、そなたに…」
「殿」
「…如何した」
「気分が優れませぬもので。…お引き取り願えまするか」
やっとの思いで出した声だった。