矢刺さる先に花開く


そっと様子を窺うが…怒るどころか、夫はますます顔を赤らめていた。


「あ、あの殿、申し訳ござりませ「いや、別にそういうわけではない」


謝る経子の言葉を慌てて遮る重盛。


「……しいそなたに言われるとは思いもせなんだ故」


「……?すみませぬ、聞き取れませなんだ。今なんと?」


「!!……いや、だから…」


「ふふ。急に如何されたのですか」


「だから…可愛らしいそなたに言われるとは、と申したのだ……」


……夫婦で頬を赤らめ、黙り込んでしまった。


――暫くのち。清盛が藤原経宗、藤原惟方と立てた作戦により、二条帝を奪い返し。


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