やさぐれ女の純情


「咲樹ちゃん」


待たされていた間、


黙々と作業に打ち込む背中が大きく曲がったおじいさんの傍らで、


咲樹は神業としか言いようがないその鉋がけに見惚れていた。



「ほれっ、咲樹ちゃん。行くよ」


自分の声が耳に届かないほどの集中力で、


職人の技を凝視している咲樹の肩をつついてきたのは


この木材店の社長。







< 29 / 44 >

この作品をシェア

pagetop