やさぐれ女の純情
社長を待っていた一番大きな倉庫へと引き返す途中。
二人は、社長が次に狙っている〝神代杉〟の魅力について熱く語り合っていた。
すると、咲樹の携帯電話が上着のポケットで激しく震えだす。
夕方間近のこの時間は、仕事の電話がかかってくることが多い。
すみませんと社長に一言断わり、咲樹は携帯の液晶画面を確認した。
「あっ、百合さんだ」
「百合か……」
社長の顔が一瞬にして凍りつく。
百合さんとは、社長の娘さん兼、咲樹の中ボス。
つまり、咲樹が籍を置く小さなデザイン事務所の社長だ。