何度でも何度でも…
そんなひとつひとつに大切にされていることがわかる

だから離れられないのよ、こいつからは

「……ご飯の準備をしたいんだけどな、海斗君」

おなかすいた

顔だけ向けると至近距離に海斗の漆黒の瞳があって、ちょっとドキッとする

吸い込まれそうなほどきれいな黒

でも、それが自分に向くときは、その瞬間だけは優しさを帯びることを知っている

その瞳が向くたびにそっとうれしい気持ちになるのはそのせいだ

「昨日あれだけ食べておいてよく言うよ」

あきれ交じりにつぶやく海斗の声が、振動として伝わってくる

「炭水化物取ってないもん」

隙間なく抱きしめられてすぐそばに海斗のぬくもりを感じることができる

そこのことが、純粋にうれしい

失いたくない想いは、温もりはいつも近くにある

それが何より安心できる

切なげに瞳を細めてからそっと瞼を閉じたしるふは、

「…海斗、」

小さな声で愛しい名を呼ぶ

どうした、と視線で問いてくる海斗を見上げるように体を動かす

同時に、海斗もしるふの横に腕をついて隙間を作ってくれる


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