純愛短編集(完)

『生涯の伴侶』

朝の7時、あたしは今日も、貴方に会う為に学校へ行く。



「ばーか、それはyだよ。xは…」

チャイムと共に、あたしと彼の机を向かい合わせにする。

英語の授業の後の休み時間なら英語の予習をするように、今は数学の予習をしていた。

「お前、xとyを逆に覚えてたら、高校受験受かんねーぞ?」

悪戯っぽく笑う彼に、薄紅色になった頬を隠すように机に突っ伏した。

「うぅー…数学だけじゃなくて英語も絶対無理だよぉ」

「お前さ…ローマ字も打てないよな」

一瞬だけ自分の体が大きく震えたことが分かった。

「ひ、人には誰だって苦手な物があるの!!」

完璧な人なんていない、と言いかけてやめた。

…いるじゃないか、目の前に。

料理以外は何でも出来る、完璧な人が。

「確かに俺も…料理は無理だな…」

あたしの大好きな彼は、苦笑しながら言った。

「………そだね…」

「おい!!ちょっとくらいフォローしろよ!!」

一瞬なにかを考え込んだあたしは、瞳に憂いを宿していた。

彼の「おい!!」にハッとした時には、チャイムが鳴っていた。



国語の後の休み時間、つまり今は国語の予習の時間。

「…あれ?ひとみってどう書くんだったっけ?」

「え、なにいきなり?目の横に児童の童だよ?」

「あぁ、そっか!!あんま使わないとすぐ忘れるんだよなぁ」

彼の言うことは尤もなことだった。

使わないと誰だってすぐに忘れてしまう。

ずっと会っていなければ、その人の事も…じゃぁいつか、あたしの事も…?



続きます
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