純愛短編集(完)

『クラス替え』

「ねぇねぇ、こっちの人と…こっちの人!!どっちの方が好き!?」

数ページ違うところに写っている二人の男。

「…別に、どっちでもいいと思うけど」

「またまたぁー!!…で、どっち!?」

女が二人、その部屋にはいた。

机に頬杖を突いて、雑誌に全く興味を示さない女と、雑誌の二人の男のどっちが好きかと聞いている少女。

少女は女の部屋に雑誌を片手によく押しかけてくる。

雑誌の男の中から二人を選び、女に「どっちが好き!?」と聞くのだ。

それも決まって木曜日に。

ここまで来ると、もう女と少女の関係性が分かってくる。

そう、少女は女の妹だ。

「…どっちでもいいって、いつも言ってると思うんだけど」

女はうんざりとした表情を隠すことなく顔に出している。

対して少女は眉を寄せて、頬を膨らませて「えー!!つまんなーい!!」という言葉が聞こえてきそうな顔をしていた。

「あたしこそいつも言ってると思うけど、なんでお姉ちゃんはそんなに男に興味がないの!?」

女は、少女の「もう高校生でしょ!?」という言葉を軽く受け流した。

「…じゃぁ逆に聞くけど、なんでそんなに男に興味があるの?」


「勿論、格好良いから!!」


即答だった。

女は隠すことなく、溜め息を吐いた。

「明日は私、高校の始業式なの。明後日の入学式で一年生をどう迎えるかとか聞いてくるのよ」

少女は「だから?」という顔で女を見つめた。

そんな少女に、女は容赦なく言葉を放った。

「邪魔なの。寝れないの。出てけ雑誌馬鹿」

少女は「雑誌馬鹿!?」と叫んだ。

そしてすぐ、「雑誌馬鹿…雑誌馬鹿…雑誌馬鹿…」と呟きながら出て行った。

女は漸く煩いのが出て行ったと思った。

しかし、生まれてしまった“寂しい”という気持ち。

誰もいない、たった一人のこの部屋は、とても広く感じた。



続きます
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