シークレット ハニー~101号室の恋事情~


「珍しいね。全部アルコール?」
「あーはい。あまり飲めないんですけど、なんかそんな気分で。
あ、飲むならどうぞ。常温ですけど」
「いや、俺は大丈夫。葉月は?」
「私も……やっぱりいいです。飲んでも仕方ないし」


アルコールに逃げようとしたけど、どうせ明日の朝になれば思い出すんだし忘れられるのなんて一瞬だ。
五十嵐さんのおかげで温かいご飯も食べられた事だし、お風呂に入って寝ればそれで十分。


「そういえば、ラベンダーの入浴剤が余ってるんだけど、葉月使う?
俺は入浴剤って使わないけど、評判いいやつだから」
「いいんですか?」
「食べ終わったら持ってくるよ。
残念ながら実物の花は入ってないけど、排水溝に詰まらないからマンションには優しいかな」
「確かにここの排水溝細いですもんね」


無意識に笑うと、五十嵐さんが優しく微笑む。

会って少ししか経っていないのに。
五十嵐さんと一緒にいるとなんだか落ち着く。

たいした話してないのに、話してるだけで、五十嵐さんが一緒にいてくれるだけで、気持ちが和らいでいる事に気づいて。
それが恥ずかしいようで嬉しかった。




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