プラトニック
わたしは口ごもりながら、予備校のことを話した。

この状況で仕事の話をするなんて、すごく自分が冷たい人間みたいだった。


だけどしかたないんだ。

これが現実。


そして、どこまでも惹かれていきそうなわたしを止めてくれる、唯一のものだから。



酷な話だったけど、瑠衣は意外とあっさり納得してくれた。


「まあ予備校のことは、最初からわかってたし」

「ごめんね」

「ううん」


少しだけ寂しそうな笑顔で首を振る瑠衣。


「でも俺はあきらめへんよ」

「……片瀬くんって、なんでそんなにポジティブなわけ?」

「そりゃあもう、虹の前の雨やと思えば、頑張れますから」


瑠衣は屈託なく笑う。


虹の話……初めて海に行った日のことを、思い出した。


「俺、何か嫌なことがあるたびに、“これは虹を見るための雨なんや”って思うことにしてるんです。
そしたら嫌なことも、少しは楽しくなるっていうか」


「うん」


「辛いことがあった分、きっと願い事も叶うんやと思う」


「うん……」


本当に、そうだったらいいな。

柄にもなく願ってしまった。


「あ、ところで俺、先生に聞きたいことがあったんやけど」

わたしに向き直り、瑠衣が言った。

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