プラトニック
「何?」

「あ、やばっ」


わたしが顔を上げると、よそ見していた女子生徒がサッと教壇の方に向き直る。

そのとき、乾いた小さな音を立てて、紙切れが床に落ちた。


手紙……? 


授業中に生徒が手紙をまわすのは、普段からよくあることだ。

別に腹も立たないけれど、ここ最近の生徒たちのたるみ具合を考えて、一応注意しておくことにした。


「今は授業中でしょ。いくら休み明けやからって――」


落ちた手紙を拾い上げ、言いかけたところで、息をのんだ。



【水野は男子生徒をたぶらかすのが趣味】


【水野に彼氏取られへんよう、気をつけて!】



吐き気にも似た、不快感がこみ上げる。


思わず教室を見回した。

以前わたしに面と向かって悪口を言ってきた女子たちはいない。


他の生徒にまでおかしな噂が広がっているってことか……。



「授業を…続けます」


わたしは手紙をポケットに入れて、再び教科書を開いた。


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