桜涙 ~キミとの約束~
思考は、停止寸前だった。
奏ちゃんの言葉の意味が理解できなくて、私はただ、固まっていて。
向かい側に座る奏ちゃんは嬉しそうにしてる。
瞬きをして、奏ちゃんの横に座るリクを見れば……
リクは、悲しげに眉を潜めて奏ちゃんの横顔を見つめていた。
その視線が、ふと私に向いて。
悲しげな瞳のまま、微笑んだ。
「なんかオレ、お邪魔だよな。帰る」
言い残して、リクは伝票を手にすると会計へと向かってしまった。
「あ……リク……」
溢れた声はリクには届かない。
思考はいまだ正常には動いてくれないけれど、それでも心が感じていたのは……
リクが離れて行ってしまった寂しさと、
痛みだった。