桜涙 ~キミとの約束~


思考は、停止寸前だった。

奏ちゃんの言葉の意味が理解できなくて、私はただ、固まっていて。


向かい側に座る奏ちゃんは嬉しそうにしてる。

瞬きをして、奏ちゃんの横に座るリクを見れば……


リクは、悲しげに眉を潜めて奏ちゃんの横顔を見つめていた。

その視線が、ふと私に向いて。


悲しげな瞳のまま、微笑んだ。


「なんかオレ、お邪魔だよな。帰る」


言い残して、リクは伝票を手にすると会計へと向かってしまった。


「あ……リク……」


溢れた声はリクには届かない。

思考はいまだ正常には動いてくれないけれど、それでも心が感じていたのは……


リクが離れて行ってしまった寂しさと、


痛みだった。









< 116 / 494 >

この作品をシェア

pagetop