桜涙 ~キミとの約束~


奏ちゃんは、約束の少年が自分だと告白してから、こんな風に私に接するようになっていた。


『小春の事、大事にするよ。一生をかけて』


あの時言ったとおり、奏ちゃんは私を慈しむようにそばにいる。

まるで……


恋人のように。


……違う。
奏ちゃんにとって私はもうすでに、恋人なのだ。

毎朝迎えに来て、私と手を繋ぎ、時々伝える。


「小春とこんな風に一緒にいられるなんて、幸せだ」


そして、問われる。


「小春も、同じように想ってくれてるよね?」


弱虫の私は、ただ微笑むことで答えるだけ。

そして心の中で奏ちゃんに問いかけるの。


奏ちゃん、どうしちゃったの?

頭のいい奏ちゃんなら、あの時した私の返事がどんな意味かなんてわかるはずなのに。


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