桜涙 ~キミとの約束~


「あ……」


私は、信じられないような気持ちで彼と倒れた獲物を交互に見る。

彼は構えを解き、ゆっくりとその体を起こすと……


「見たか小春! オレの実力を!」


白い歯を見せ笑んだ。


「すごい! さっすがリクだ~」


拍手すると、リクはいたずらっ子のような笑みを出店のおじさんに向ける。


「どうよ、オレの射的力!」

「まさか本当に落とすとは思わなかったぜ。ほら、嬢ちゃん。持って行きな」


そう言っておじさんが渡してくれたのは、私が一目惚れした熊のぬいぐるみ。

見かけた瞬間に私の体に稲妻が走ってしまい、射的の得意なリクに取って欲しいと頼んだのが始まりだ。

ただ、ちょっと重さのある人形だから、おじさんは難易度高いぞって言ってて。

その通り、リクは五発中の最後の一発でようやく仕留められたのだ。

けど、やっぱりリクは射的が上手だ。

仕留めたのはラスト一発にしろ、実はそれまでの四発は全部熊の人形に当たっていたのだから。


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