ほうき星 ~運命の輝き~

出逢った頃は「奄美ちゃん奄美ちゃん」って甘えん坊で可愛げがあったのに…。


気付いた時には「希」って呼び捨てになってるし。


おまけに高校に上がったらいきなり呼び出されて本来なら熟睡してる時間にたたき起こされて
外に連れ出されるし。


何考えてんだか…。


「希…」

「…ん?」


カンカンカンカン…。


「彗星は別名、“ほうき星”と言われて日本人にも馴染み深い天体なんだ。中には日本人が発見したモノもある」


踏切警報機が頭に痛く鳴り響く中、悠が話し出した。


昔からあたしよりも物知りだった彼。


それをいつも自慢げに聞かされた。


「ほうき星…こっからは俺の勝手な解釈だけどさ、ほうき星って何年も続けて見れるモノじゃない。早くて数年、長いモノで数百年の確率なんだ。それってさ奇跡みてぇなもんだろ?俺さ…“運命”も同じなんじゃないかなって思うんだ。その機会を逃したら次巡り会えるのは次の世代かもしれないだろ?だから俺は“イマ”というほうき星を失いたくないんだ…」


そこで一旦区切り悠はあたしを振り向いた。


ごくまれに見せる真剣な表情。


な…なんか、こっちまで緊張してきた。


心臓の高鳴りを気にしつつそのまま見つめ合っていると彼の口が微かに動いた。


直後、電車が通過し声が聞こえなかった。
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