もうひとつの恋
それでもそれを隠すように、普段通りを装って俺に話しかけてくる。


「あんなにたくさん美味しそうに食べてくれると、作ったかいがあったなぁ」


俺を気遣うように笑いながら話すさとみさんに、俺は言い出すタイミングを失ってしまう。


どうしようかと頭を悩ませながら返事が出来ないでいると、さとみさんもそんな空気を察したのか黙りこんでしまった。


しばらくそのまま沈黙が続く……


俺はようやく勇気を振り絞って口を開いた。


「さとみさん……俺……」


せっかく意を決して口を開いたというのに、そこまで言うと言葉が先に続かなかった。


さとみさんはそんな俺を見て、この雰囲気を一変させようと思ったのか、いつもよりさらに明るい口調で話しだす。


「どしたの?
もぉ、いつもの桜井くんらしくもないじゃない?

ほら!笑って笑って!」


さとみさんが、はぐらかそうとしているのがわかって、俺はやりきれない気持ちでいっぱいになる。


でも、それでも負けずに自分の気持ちを伝えなきゃならない。


そう決心して、きちんと気持ちを伝えるために、俺はウインカーを出して車を路肩に停めた。


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