もうひとつの恋



美咲さんからの電話で呼び出された俺は、いつもの居酒屋でいつものように彼女を待っていた。


たぶん部長達がどうなったかの報告だとは思うけれど、うまくいったことはすでに部長から聞いている。


でも俺は美咲さんに相談したいこともあったし、いい機会だからと二人で会うことにしたのだ。


部長は動物園に行った次の日に、俺にきちんと報告してくれた。


健太とうまくいかなかったこと……


落ち込んでいた帰り道に、さとみさんから健太が自分の子だと聞かされたこと……


そしてこれから健太の三年間を取り戻すつもりで頑張って父親になろうと思ったこと……


俺はそれを聞いて、自分に出来ることはもうないなと思った。


後は部長やさとみさんで健太のために頑張って、いい夫婦になってほしい……


そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、部長は最後に俺に言った。


「桜井……お前、わざとだろ?」


「えっ?何がですか?」


俺は部長の問いにとぼけて答える。


「あの子が俺の子だってこと、わざと言わなかったろ?」


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