僕は何度でも、きみに初めての恋をする。


うん、とは答えなかった。

会おうとも、会わないとも、決めてなんかいなかった。でも。

どしゃ降りの大雨。朝よりもずっと勢いを増しているその中に、一歩足を踏み入れることすら煩わしいこんな日に、わざわざ公園に行く人なんて一体どこにいるんだろう。

きっとあの人も、今日はいない。

星の数みたいな雨が降り続ける空に、なんとなく、息を吐く。



「倉沢さん」


6時間目の授業が終わって、放課後。帰ろうかと席を立ったときに、ふと呼ばれて振り向いた。

呼んだのは同じクラスの三浦さんだった。三浦さんとは仲が悪いわけじゃないし、嫌いでももちろんないけれど、そんなによく話すわけでもないからこうやって声をかけられるのは珍しい。

ただ、どちらかというと三浦さんは、ハナと似たようなタイプだ。相手を問わずに仲良くなれるっていうか。

だけど三浦さんはハナと違って、問答無用に距離を詰めてきたりはしないけど。


「吉本先生が課題、早く提出しろって」

「ああ、うん、ありがとう。今から出しに行く」

「珍しいよね、倉沢さんが課題忘れるなんてさ。なんか、そういうとこ真面目なイメージあるから」

「そんなこと、ないけど」


いや、うん、確かに。課題はたいていきっちりこなすタイプだと思う。こんなふうに忘れることって自分でもホント、珍しい。

でも、近頃はそんなことすらままならないくらいに、ちょっと、心に余裕がないのかもしれない。

なんだかいろんなことが、上手く回らないんだ。
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