僕は何度でも、きみに初めての恋をする。

別にお洒落なデートをしなくたって、ただ街を廻るだけならそれでもよかった。のんびり散歩をするのは別に嫌いじゃないから。

だけどハナとのこの“デート”は、デートと呼べないばかりかのどかな散歩とも言えなかった。

どうやら彼はただ今、野良猫にご執心らしい。


よくわからないけど、ハナ曰く「いい感じ」の猫を見つけては、近づいて、逃げられて、そして追いかけ回しているわけだ。

それからさらにその後ろを、わたしが追いかける形になり。


このデートは、思いのほか、ハードなものになっている。


「あ! やった、あそこで休んでる……かわいいなあ」

「……はあ……やっと、止まってくれた……」


息を切らしながらどうにかこうにか追いついたのは、人ふたりがぎりぎり通れるくらいの狭い道の突き当り。

両脇と数メートル先の正面は、ここよりも少し土台の高い古い家の裏側になっている。あまりにも静かなせいなのかな、生活感はあっても、人の気配は感じない。なんだか、不思議な場所だ。


ハナが追いかけていた茶色と白の混ざった猫は、わたしたちの先、左手の建物がちょうど無くなって日の当たっている場所で寝ころんでいた。

まだ渇ききっていない地面が多い中、日当たりのいいそこはすっかりカラっと渇いている。

なるほど日向ぼっこには最適だ。お気に入りの場所なのかもしれない。


「ちょっと……わたしも、休んでいいかな……」

「どうぞ。セイちゃんも一緒に撮ってあげる」

「やめて……! 今人に見せられない顔してるから!」

「俺はもう見ちゃってるよ。大丈夫。かわいい」

「……うぅ」


また平気でそういうこと言って……。

もういい。どうとでもなれ。
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