朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
貴次はふっと笑みを零すと、一歩柚に近付き、柚の顎を指先で持ち上げた。


貴次の綺麗な顔が近くなり、少し冷たい印象を与える瞳で見下ろされると、柚は妙にドキドキした。


「私と帝は正反対の性格ですが、不思議と好みや考え方が似ているところがあるのです」


「へ、へえ」


 柚はそれ以外の相槌の言葉が見つからなかった。


だからなんだと思った。


そんなことより、その指をどけてもらいたい。


顔が近すぎる。


「どうです、私の稽古を受けませんか?

私は稚夜様の稽古の教育係をしています。

稚夜様は毎日のようにあなたに会いたいと愚痴っておいでだし、稚夜様と一緒に稽古を受ければ、誰かからまた襲われた時でも身を守ることができるでしょう」


「それは、ありがたい申し出だけど、なんで急に。貴次は私のことが嫌いだと思っていた」


「嫌い……ですか。確かに良くは思っていませんでした。

朱雀の巫女は諸刃の剣。国にとってあなたが敵になるのか味方になるのか、私の側において見極めるのも悪くない。

それに……」


 貴次は顔に吐息が吹きかかるほど、更に顔を寄せた。


切れ長の魅惑的な瞳が柚を見下ろす。


「さっきも言ったように、私と帝は好みが似ているんです。私はあなたに興味が湧いた」
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