朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
 でも、昨日のことがある。


二人きりになるのは戸惑いがあった。


「……帰る!」


 誘惑を断ち切り、柚は貴次から背を向けた。


「まだ怒っているのですか」


 貴次が呆れたように呟いたので、柚は怒って勢いよく振り向いた。


「当たり前だろ! あんなことしておいて」


「生娘でもあるまいし、接吻の一つや二つくらいで……」


「生娘?」


「ええ、そうです。

もうとっくに夜伽を終えられているでしょう。

それとも、帝じゃなければ嫌なのですか?

最初はあんなに妃になるのを拒んでいたのに」


 夜伽と言われて、由良が言っていたことを思い出した。


おそらく貴次は、柚と暁がすでに男女の一線を越えていると思っているのだろうと思った。


毎日夜を共にしているのだから、当然といえば当然だが。
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