朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「今は秋でございますぞ! それに白鳥まで! こんなところに来るなんて天変地異の前触れかもしれませぬ!」


「ははは、大げさな」


 暁は一向に気にしていないようだった。


それよりも昨夜の幸せの余韻に浸りきっていた。


「帝っ! 帝はおられますか!?」


 庭院の奥の方から如月が大声を出して駆けてくる。


いつもの冷静で寡黙な様子と一変して、その表情には焦りと怒りが含まれていた。


「如月じゃないか。そんなに慌ててどうした?」


「どうしたではありません! 帝、何をなされたのですか! 早く元にお戻しください」


「は?」


「は? ではありませんよ! この異常な気候をおつくりになったのは帝でしょう! 朱雀の巫女と夫婦になられたのがいくら嬉しいからといって季節までおかしくしてしまうのはお止めください!」


 如月の言葉に、皆があっと息を飲んだ。


言われてみれば、こんな状況を作り出せるのは帝しかいない。


しかも帝は、分かりやすいほど上機嫌で生命力に溢れていた。


こんな状況を作り出しても不思議ではない。
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