朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「どうした、柚」


 柚は睫毛を下げたまま、しばらく無言だったが、消え入るような小さな声で心境を打ち明けた。


「家族に、会いたいなぁと思って……」


 その言葉に、暁は胸がぐっと締め付けられた。


「家族が恋しく、寂しくなってしまったのか」


 暁の言葉に、柚はコクンと頷いた。


暁は、どうにかしてやりたいと思うものの、どうすることもできなかった。


何もできない代わりに、柚をぎゅっと抱きしめた。


「余では駄目か。余では柚の寂しさを埋めることはできぬか」


 柚は返事ができなかった。


暁のことは嫌いじゃなかったけれど、家族とは全然違うものだった。


 暁は柚の顎を指の背でくっと持ち上げた。柚と暁の視線がぶつかる。


「今は家族に勝てなくても、いつか家族よりも余の側にいたいと思ってもらえるように、余は頑張る」
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