朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「嫌だなんて、答えになってないし。そんな簡単にいなくなれるはずないんだから大丈夫だよ」


 柚は嘘をついた。


本当は帰る方法を知っているのに。


今すぐにでも元の世界に帰ることができるのに。


 暁は掴んでいた柚の両肩を引き寄せ、柚を抱きしめた。


「余は、臆病になってしまったかもしれぬ。

柚と出会うまでは、怖いものなど何一つなかった。

それなのに今は、柚が突然元の世界に帰ってしまうのではないかと不安になるのだ」


 柚は、何も答えることができなかった。


帰らないよ、とも言えないし、帰るとも言えない。


まだ決断ができていなかった。


「いなくなるな、柚。余の側にずっといてくれ」
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