エンドレス・ツール
「……りー」


翔さんの瞳が揺れている。


「翔さんは、後悔してるんですか?」

「……後悔?」

「あたしを、抱いたこと」

「……それは」

「あたしは後悔したくないです」


あたしは翔さんの首に抱き着いた。


「り……」


言いかけた翔さんの唇を塞いだ。


やめろと突き放されると思ったけど、翔さんはあたしにされるがままだった。


あたしに同情したのかもしれない。そんな考えが脳裏を過ぎった。


翔さんに見えないようにあたしは涙を一筋流した。


あたしは後悔したくない。


こうなってしまったのはあたしのせいだ。そして、今翔さんを苦しめているのもあたし。


でも、あなたが好きなの。


「…………っ」


その時、翔さんの腕があたしの背中に回った。


直に感じる体温に、あたしの体はぴくりと震えた。


「りー」


一瞬口が離れて名前を呼ばれる。


次の瞬間、翔さんが覆いかぶさるように唇を重ねた。


荒々しく、あたしの唇を貪る。


「んっ……」


激しいキスに息が苦しくなる。


見えないからわからない。ただわかるのは、今翔さんにその表情をさせているのは、あたしだということ。


あたしは、最低な人間だ。


< 126 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop