恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*


「山岸くんもそれぐらいじゃ妬かないだろ?」


舞い上がってた気持ちを、見事に沈ませる言葉だった。


……バカみたい。

2人きりになった事とか、先輩の服を貸してもらったとか、そんな事に喜んじゃって。


だからって、先輩の気持ちが変わったわけでもないし、あたしと先輩がどうこうなれるわけじゃないのに。


今度から山岸にバカとか言うのよそう。

こんなんじゃ人の事言えないもん。


そんな風に考えて、わざと悲しい気持ちから目を逸らそうとした。

けど……、どんなにバカみたいでも、悲しくて。寂しくて。


先輩から山岸の名前が出るたびに、あたしの事なんか好きじゃないって言われてるみたいで、耳を塞ぎたくなる。


唇を噛み締めて、持っている先輩のシャツを握る。



< 196 / 364 >

この作品をシェア

pagetop