星に願いを
「じゃぁ、俺やめるわ。」


創は「はぁ?」と首をかしげた。


「この会社、やめるから。」


創は呆れたといわんばかりにツカツカとソファまで歩いてくると、ドカッと座り直した。


「我儘もいい加減にしろよ。
お前にそんなこと言う権限は…」


「俺、本気だよ。」


創の言葉に被さるように言った。


「…。」


「兄貴だってわかるだろう?俺の気持ち。やっと彼女に会えたんだぞ。」


「偶然だけどな…。」


腹の立つ言い方をした創を、悠は睨んだ。


「まぁ気持ちもわからなくもない…いいだろう。この会社に彼女を置こう。
思い出作りにはもってこいだ。どうせこのプロジェクトを終えればお前はアメリカ行きだ。」


そう言うと、悠をチラッと見ながら指をポキポキ鳴らした。



「その代わり手を出すなよ。」


「なんだよ、それ。」





創は見据えて言った。


「はっきり言う。今のお前にはもう彼女は必要ない。
今必要なのは、この会社を継ぐという強い意思だけだ。
それがどういう事かわかっているはずだ。美紀さんの事もだ。」



情けは一度だけだと言って創は部屋を出た。


< 23 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop