星に願いを


それから順調に日は過ぎた。


相談室にも徐々に社員が来るようになり、毎日が緊張と充実の日々となっていた。



夕刻になり、出先から戻ってきた悠が相談室に顔を出した。



「田中さん、袴田さん、どうですか?順調ですか?」


田中は気さくな人柄で、入社してすぐに社員の人気者になっていた。


「田中さん、体に負担にならない程度にまた行きましょう。」とクイッと飲むふりをした。


田中と悠は今までに何度か飲みに行っているらしい。



「今日は娘の誕生日でね、私はこれで失礼しますよ。ではまたクイッと行きましょうね。」


田中は嬉しそうにしながら相談室を出た。


ほのぼのとした田中の背中を見送った後、悠から視線を向けられた。




「袴田さん、今夜って何か予定ある?」


「…いえ、今夜は特にないですが。」


少し視線をずらして答えた。



「じゃぁ、今夜つきあってもらうよ。18時半に下の駐車場で待ってて。」


そう言うと、すぐに部屋を出て行ってしまった。


星子の顔はほんのり赤かった。




―だめだ。今夜きちんと話さなきゃー


一瞬でも揺れた気持ちに気がついて、そっと心に蓋をした。


< 94 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop