コンプレックスな関係



『ふざけんなよ!てめぇの女遊びの尻拭い、女にさせてんじゃねぇよ!』


『二度と莉生に、俺の妹に関わるな』



夏前の出来事が頭から離れない。


殴られたのなんて、初めてだった。


俺の妹、ね……。


妹を心配する気持ちは、俺だって良くわかる。


『貴弥っ』


あんなに切羽詰まったような莉生の声は、初めて聞いた。


だけど、あんな無様な姿を晒して


おまけに


二度と近づくな、とまで言われて。


莉生とそのまま付き合い続けるのは、俺のプライドが許さなかった。


あの夜。


謝罪のメールを寄越した莉生に


俺は


『別れよ』


たったひと言で1年半の付き合いを終わらせた。


あんな凶暴な兄貴がいるなんて聞いてなかったけど


まあ、潮時だったのかもしれない。


莉生は何ひとつ俺の行動を制限しようとしなかった。


だから、その楽さに甘えて、惰性で付き合っていたようなものだ。


そう。


そう思っていたんだよ……。


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