オートフォーカス
「良かった。」

嬉しそうに微笑む姿は本当にどこまでも罪だなと篤希は思った。

彼のこの心境を知らない絢子はただ幸せそうにコーヒーを飲んだ。

食事も終わって時間がまだ余っている2人は再び買い物に出ることにした。

ついでに絢子の買い物に付き合うと篤希が言ったのだ。

一生懸命楽しそうに選ぶ絢子の後ろを微笑みながら篤希はついていく。

しばらく歩いていると篤希はある一点に目を奪われた。

ディスプレイで飾られていた建築の本が目に留まり、ふと加奈を思い出したのだ。

いつもこんな感じの本を持ち歩いている。

図書室で勉強している時も机上に建築の本があった。

構内で顔を合わせると挨拶や少し会話をする程度の中、しかし篤希はなんとなく加奈が気になっていた。

くるくると表情が変わる加奈、絢子のような落ち着きはなくまだまだ無邪気という言葉が似合いそうな印象がある。

でもたまに見せる大人っぽい部分が篤希を翻弄させる、それが悪くないと思っているのは間違いなかった。

目の前に歩く絢子はやはりどこか大人っぽさを感じる雰囲気がある、それは服装や髪形から感じるものもあった。

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