オートフォーカス
連絡先を知らないだけでこうも微妙な気持ちになるなんて思いもしなかった。

自分も携帯依存なのかなと考える篤希は強い視線に気付いて加奈の方を見る。

「どうした？」

何回も瞬きを重ねる姿は何かに驚いているようだ。

しかし加奈は首を横に振って何でもないと言う。

「なに？」

何でもない筈がないので篤希はもう一度聞くことにした。

「うーん…まつ毛長いなと思って。」

少し言いにくそうに加奈が答える。

男だからまつ毛が長いと言われても嬉しくないだろうと思ったのだろうか、加奈に珍しく歯切れが悪い言い方に首を傾げた。

しかし反応を見せないと相手が困るだろう、ここは加奈のやり方でいこうと篤希は微笑んだ。

「ありがとう。」

褒め言葉として有り難く受け取る。

篤希の気持ちが伝わったのか、加奈は少しはにかみながら笑って答えた。

「どういたしまして。はい、私の番号。」

お互いに連絡先を交換して保存されたことを確認する。

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