オートフォーカス
「もっと知りたい…もっと調べたいの。そしていつか…私も造ってみたいの。」

そう天井を見上げる加奈の横顔は輝いていたが、同時に少し憂いを帯びているようにも見えた。

照明の加減なのかもしれない、気にしないようにしたが声の質も少し違う気がして篤希は不安を覚えた。

「ね、篤希は10年後自分がどうなっていると思う?」

「え?」

そう言って向けられた視線は少し寂しげなものだった。

何か言いたそうな、そんな気配を感じられたが次に見せた笑みがそれを忘れさせる。

「お腹出てたりして。」

「…気を付けるよ。」

楽しそうにケラケラ笑う加奈の眠気も全くないようだ。

2人は下らない話をしながら夜が明けるまで語り続け、いつの間にか寝てしまった篤希が目を覚ましたのは目覚まし時計の音が鳴った時だった。

今日は1限があるからと早めにセットしていたのだ。

「加奈?」

ベッドに加奈の姿はなかった。

カーテンを開けて見ると彼女の荷物もなくなっているのが分かる。

玄関に靴もなかったことから彼女が帰ってしまったことが分かった。

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