オートフォーカス
それは今日も例外ではない。

ギリギリの時間まで図書館にこもり資料と格闘、そしてバイトへと向かった。

昨日よりも寒さが厳しくなっている。

夜も深くなると気温はグンと下がって容赦ない、激しい冷え込みに身を縮めながら愛車の原付を走らせて篤希は家路についた。

早く家で温まりたい、まずは暖房を入れて風呂に入ってご飯を食べて、家に着いてからのシミュレーションを頭の中で繰り広げながら通い慣れた道を行く。

駐輪場に原付を止めて小走りで帰ってくると部屋の前に人影があるのが見えた。

不審に思い電話を片手に少しずつ近づいていくと、思いがけない人物だということに気付き篤希は驚いて声を上げる。

「加奈!?」

篤希の声に顔を上げた加奈は嬉しそうに笑い手を振った。

「篤希。おかえりー。」

マフラーでぐるぐる巻きにされ口元はよく見えない。

吐く息が自分より白く見えるのは気のせいだろうか。

とにかく篤希は急いで彼女の元に駆け寄った。

「一体どうして…。」

「お土産持ってきたんだ。」

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