オートフォーカス
「バイト?」

「そっ。」

何人かが声を揃えて口にすると、裕二は嬉しそうに歯を見せて笑った。

子供みたいに無邪気な笑顔で聞いてくれよと体を前のめりにする。

「えー。我が葛飾家の本家は旅館を営んでおりまして、そのお手伝いを年末年始にいかがですか?というものです。」

胸をはり、鼻高々に話す裕二はいつになく誇らしげだ。

腰に手を当てて周りの反応を待つあたり、残念ながら幼さが見えてしまう。

いつもなら白けた目で見て無言を貫き通すところだが、話題が話題なだけに雅之も関心の声を漏らした。

「へぇ…お前ん家、旅館なの。」

「俺ん家っていうか、ばあちゃん家ね。結構古くて歴史あんだ。」

そう言って裕二はカバンの中からパンフレットを取り出し、忙しく机の上に置いた。

仁美が手に取ると、興味津々な残りの3人が彼女の背後や横に回って覗きこむ。

「龍泉閣。」

旅館の名前を読み上げて開いた瞬間に4人から同時に感動の声が上がった。

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