オートフォーカス
この3人に任せておけば間違いなく楽しい時間を過ごせるはずだ、そんな確信もあって待つことにしたのだ。

「神戸行ったことあるの?」

あんまり関心を示さない篤希にまさかと絢子は尋ねた。

彼女の予想通りに篤希は穏やかに笑って頷く。

「写真は残ってるからあると思う。僕に記憶はないけど。」

古い記憶を呼び起こしても何一つ拾えない、そして写真を見ながら聞かされた話で埋めていくのだ。

「家族旅行で?」

「うん。小さい頃にね。」

母や父と手を繋いでいる写真を思い出した。

まだ幼い頃の自分は写真というものがよく分からず、ほとんどがしかめっ面の家族写真。

それでも楽しそうに思い出を話す両親の姿も浮かんできて恥ずかしさから苦笑いしてしまった。

そうなんだと微笑ましそうに顔をほころばせる絢子に少し救われた気がする。

「なあに?楽しそう。」

他愛ない話をしていると横から仁美が身を乗り出してきた。

突然の参加に2人は少し驚いたようだ。

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