緋~隠された恋情
私はすりすりとお兄ちゃんの手をさすりながら、

「好きだな。お兄ちゃんの手。」

「なんだよ。」

焦るお兄ちゃんをあおるように、

「私たちのためにずっと頑張ってくれた、

 働き者の手。

 やさしくて、

 大きくて。」

私は言葉を続ける。


「……なの?」

と、呟くように言った。

「え?」

「だからなの?

 お兄ちゃんはそばにいるって言ってくれてるの?

 お店のこと悪いと思ってるからなの?」

「……」

「お兄ちゃん。」


「そうなの……かな?」


「ならもういいよ。

 お店がなくなったらお兄ちゃん自由になれるんだよ?

 私のことなんかほっておいて自由になればいいのに。

 十分だよ。

 もう十分色々してもらったもの。

 お兄ちゃんばかり苦労しなくていいんだから

 聞いたよ。

 真央さんとのこと。

 好きな人がいるって事も。

 もう、私は十分幸せにしてもらったもの。

 今度はお兄ちゃんが幸せになればいいよ。」

なんだろう。


私の気持ちはダメだといっているのに、

口から出る言葉はお兄ちゃんを突き放そうとしている。


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