緋~隠された恋情
「お前らが体の関係だったってことを知った時はさすがに、驚いたけど、

 ありさが納得しての関係なら、
 
 俺がどうこう言う必要はない。

 そう思ってきた。」


「おまえ、悔しいとかそういう気持ちはないのかよ?」


「何故?」


「くっ」


俺が今まで感情を殺してここにいた意味は

なかったということか?


他人を肯定することしかしない人間なんているものか。


今頃気がついた。


人間じゃない。化物だな。


いや、ロボットのようなものか。



そして、負の感情のないモノに

怒りの感情を求めた俺は

ただのピエロなのか?


しばらく言葉をなくした俺を、

困ったように眉を顰めている新。

もう、

俺がここにいる意味はない。

今俺はどんな顔をして立っているんだ?


ショックを受けて、落胆しているのは俺の方じゃないのか?


「ありさを傷つけて、

 あいつを失っていちばん傷ついた顔してるのは

 平、お前じゃないのか?」


「なっ!」


「鏡見てみろよ、

 お前の顔。

 精気の無い顔してるぞ。」

目の前のガラスに映る自分が視界に入り息をのんだ、

これが俺?

「平。」

はっとして俺はガラスから視線をそらした。

そして作り笑いを浮かべた。


「新。

 俺、ここを出る。」


「だってお前大丈夫なのか?

 住むところは?

 ご両親は福岡なんだろ?」


「嘘だよ。

 親が遠くにいることは確かだけど、

 日本じゃない、

 外交官として海外だよ。

 金に困ることもないし、

 学校のそばにマンションだってある。

 住むところがないなんて

 お前らのそばにいるための嘘さ。」


「そうか、よかった。」


この期に及んでも、俺を心配するってのか、


「…もう、いいか、

 お前と話すとイラつく!

 出て行ってくれ。」


「そうか、元気でやれよ。」



最後の一言が更に俺をイラつかせる、


「出て行け!」


テーブルをバン!っと思い切り両手で叩いた。



 



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