緋~隠された恋情
ガラッ

「早かったか?」

下宿人A

同じ高校の教師の植木平(うえき たいら)

「お帰りなさい。

 早かったんですね。」


「ああ、『後でなっ』ていったじゃん。」

平は、

私の肩を抱き耳元にキスをする。


「やめてくださいセンセ、誰か来ますよ。」


「なら後で部屋に来いよ。な?」


私は黙って頷いて、

ホワイトボードにA定の写真付きメニューを貼り付けて、

食堂をあとにする。


「あとはセルフでお願いします。」


そう言ってTVのリモコンをカウンターに

置いて店舗に戻ろうとすると、


「来るよな!」

そう強い口調でいう平に、

「はい。」

と返事をした。


満足そうな顔の平を横目で見て、

気持ちが沈んだ。

一体私は何がやりたいのかと

情けない自分を打ち捨てたい気分になった。





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