緋~隠された恋情
「ところで、

なんであのバスに乗ってたの?」


「ああ、あれね、

平に呼ばれたんだ。

 で、なんかお前が弱ってるって、

 で、なんとなくのりでバスに乗って

 お前の住むアパートに向かうところだったんだけど……?」


「平って、

 なんでお兄ちゃんと連絡取れてるの?

 私の携帯からかけても繋がらないのに?」


「かけたのはいつ?」


「半年前。」


「そりゃあそうだよ、

 アメリカにいたから、

 けど、昨日戻ってきて、

 手続きをしてまた使えるようになったんだ。


 ていうかずっと料金引き落とされてた、

 使わないのにもったいなかったよな。


 今度スマフォにしたんだよ。


 むこうでも会社の携帯だったけどワイフォンだったから

 こっちもそれにしたんだ。

 これ便利だよな」


のんきにスマフォを自慢するお兄ちゃんに

無性に腹が立つ。


「着信拒否してたわけじゃないの?」


「え、そうじゃないけど、

 ただ単に日本の携帯が繋がらなかっただけ」


「連絡くらいしなさいよ!バカ兄!」


「ごめんごめん

 連絡したい気持ちはあったけど、

 やっぱり離れる時間が必要だとも思ってた。

 お前のこといつも考えてたよ。

 けど、

 そうだな、なんとなくかっこよく姿隠したかったんだよ。


 あの時は。」


お兄ちゃんが何か言うたびになんだかイライラする。


私がもんもんと悩んでいたことは、

意味がなかったと言われている気がして…


「要するに私から逃げたかった?」

「違うよ」


「うそ、だって…」


「俺たちにはきっかけが必要だって、

 それには、あのまま一緒にいたらだめだってことも

 仕事もちゃんとしたかったし

 
 何より、澱んだ場所から、

 お前を明るい場所に連れ出したかった。

 向き合うために

 兄妹じゃ無い1人の男と女として。」

「……それって?」














 
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