緋~隠された恋情


「お前、本当は彼のこと本気だったんだろう。

 彼は誤解してたみたいだけど、

 それでいいのか?」


「は?誤解なんかしてないと思うけど」



「だって涙…

 泣いただろ。」

え?


「ほんとだ。」

私は目元を触って、初めて自分が泣いたんだって気がついた。


こぼれた涙は、少し乾いてた。


失うものへの未練の涙?


送り出すための決別の涙?


お兄ちゃんが目が覚めた嬉しい涙?


「大丈夫か?」


「何が?」


「殴ってやればよかったのに?


 勝手なこといわれっぱなしじゃないか。


 一方的に婚約解消されてどうするんだ」


「え~・・」


一体どこから聞いていたんだろ、

お兄ちゃんたら、

浮気された上、

事件に巻き込まれて、

そのうえ振られたと思ってるの?


だとしたら全くわかってないな。


どんだけ鈍いのか。

< 76 / 238 >

この作品をシェア

pagetop