桜の舞い散る頃に 【短編】
桜の舞い散る頃に
公園には、数組の家族連れが居るものの日曜日にしては静かな感じだった。

多分、桜が沢山咲いている方の公園に集まって、宴会が行われているのだろう。

その方が、私にとっても好都合だった。

相変わらず華やかに咲き誇っている桜の木の下で、私はゆっくりと腰を降ろした。

もちろん、翔太らしき人物なんて見当たらない。



―――終わったんだ。



私の淡い口約束は、あっけなく幕をおろした。


これで、良かったんだよね?


自問自答したって、正しい答えなど出るはずはない。

鞄からリングとしおりを取り出すと、そっと左手の薬指にリングをはめてみた。

緩かったリングは、今やぴったりと指にはまっている。


しおりに視線を落とした。


グイッと押し付けてきた、あの時の翔太を思い出し胸が締め付けられる。



翔太、あの日の約束忘れちゃったの?



あの日の様に、視界がぼやけていく。
私はゆっくりと瞼を閉じ、十年前にタイムトリップしてみた。
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