桜の舞い散る頃に 【短編】
十九歳の春休み

「美咲、明日の飲み会来ない?」


ある春休み中の昼下がり。

大学で同じ学部の親友梨沙と、いつもの様にカフェでダラダラと話していた。

梨沙はグラスを傾けながら、底に有る残りのオレンジジュースをゴクゴクと飲み干していた。


「それって、飲み会って言う名の合コンでしょ?」


私は、梨沙を上目づかいで見ながら聞いてみる。

「ん~~まぁ、そんなところかな」

「じゃあ、行かない」

そう言った私を、呆れ顔で見つめる梨沙。

「まさか、まだ例の彼の事を待ってるんじゃないでしょうね?」

「待ってる訳じゃないけど……」

これは本当の事。

待ってる訳じゃない。
ただ、あの日の約束を純粋に破りたくないだけなんだ。

「向こうだって、もう覚えて無いわよ」

グサッと刺さる梨沙の一言。

忘れてるって分かりきってるのに、何だか少しだけ期待もしている私が居た事に気づいた。


< 5 / 17 >

この作品をシェア

pagetop