桜の舞い散る頃に 【短編】
二十歳の誕生日
誕生日当日。

何だかドキドキしたまま、あんまり眠れなかった。

天気予報は雨って言ってたのに、外は青空が広がっていたんだ。

こんな事ってあるんだなぁ~なんて思いながら、窓を開けて深呼吸してみる。

体中に新鮮な空気が行き渡り、何だかシャキッとした気がしたよ。

私はゆっくり着替えを済ませ、念入りにメイクをした。

会える可能性の方が低いのに、なんでこんな事してるんだろう……

なんて思いながらも、どこかで期待している私も居るんだ。



馬鹿な私。



でも、良いの約束を守った事で気が済むんだから。

私は棚の上に有るガラスのジュエリーボックスの中から、銀色の不格好なリングを取り出した。



誓いの指輪。



あれから十年間、大切に大切に取っておいたんだよね。

パタンとジュエリーボックスの蓋を閉めると、机の上に有る本からしおりだけ抜き取り一緒に鞄に入れた。

四つ葉のクローバーを押し花にしたしおりは、本を開く度に幼い頃の淡い約束を思い出させた。
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