鬼畜店長

「まぁ、そういうことだから、14日、よろしくな。」



…うまいこと乗せられた気もするが、とりあえず聖バレンタインデイは、やはりこのなんだかよさげなバーで過ごすことが決定したらしい。


というか、あの程度の感謝で心がほくほくするって、あたしどんだけ聖人なんだ。心優しすぎるだろ自分。いつもの仕打ちを思い出せ。



…でもなんか店長っていつもがかなり酷い分ちょっとの優しさが身にしみるっつーか……完全に飴と鞭だよなぁこれ。




「店長も大概あたしのことダイスキですよね。」


「寝言は死んでからいえ。」


「死んでから寝言言ったらもうそれホラーですよ。」


「お前はいちいち俺の言うことにやんややんや言うからこんなことになるんだぞ。少しは自重しろ。」


「だって、あたしがやんややんや言わないと店長寂しいかなーと思って。」


「お前に心配されるほど落ちぶれちゃいねぇ。」


「とりあえず、バレンタイン楽しみにしててくださいね!」


「お前ほんと俺のことダイスキだよな。」


「店長がもっとやさしくしてくれたらもっとダイスキになるんですけどね!期待はしてないけど!」


「俺もお前に好かれようなんざミジンコほども思ってねえから安心しろ。期待通りだ。」


「知ってるけどちょっと心が痛いよ店長!」


「知るか、勝手に痛めとけ。」




……もうさっきのほくほく感すら打ち消されちゃったから、シフト増やされても頑張れないかもしれない今日この頃でした。
 



END


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