Momentary
再会


煙幕に身を隠しその場を立ち去るつもりだった。

偶然に居合わせた事件現場で、誰かに見つかるのではないかと

不安を感じながら、立ち上る煙と爆薬の臭いがもたらす誘惑に

足が止まっていた。 

だが、これ以上の長居は我が身を危険にさらす。

人ごみに身を隠し、足を進める方角を模索した。 



「振り向かないで 私の背中だけ見てついて来て」


「驚いた……アンタから接触するなんて初めてじゃないか? 

相変わらず忙しそうだな」


「呑気なこと言ってる場合じゃないでしょう ここがどこだかわかってるの? 

右はダメ 検問が始まってる」


「そうカリカリするな 久しぶりに会ったんだ 嬉しそうな顔ぐらいしろ」


「無駄口を叩いてないで ここから早く離れるわよ」



雑踏を抜けた途端、女が走り出した。

見慣れた背中を追いかける。

鍛えられた体に無駄な筋肉などなく、抱きしめるとしなやかに

俺の腕の中で弓しなる。

緊張と危険に身をおく女は、抱きあう一瞬さえも気を抜かず、

俺に挑むように絡みついてくる。


刹那の夜が蘇る。  

久しぶりに見る女の背中に激情が沸きあがり、この手に抱くために

懸命に走った。





路地裏を抜け、古びた雑居ビルの地下へとおりた。

朝方まで賑わっただろう店々は、今はひっそりと帳を降ろしていた。



「入って 身売りした店だから人は来ないわ」



年季の入ったカウンター、使い込まれた椅子。

薄暗い店内には壁一面にボトルが寂しそうに並んでおり、

天井には大きなファンが埃をかぶったまま不気味な姿をさらしていた。

女が振り向いた。



「事件現場にいるなんて 見つかったらどうするの!」


「見つからないさ……」



女の首を引寄せ、真一文字に結ばれた唇を覆った。

互いの無事を確認するように、何度も唇を重ね合わせていく。

胸元に流れる汗を吸い上げ、胸の隙間に流れるのを食い止め、

前が肌蹴たシャツを掻き分け、下着からこぼれんばかりの乳房を引き出した。

汗で湿った乳房は熱を持ち、手で掴みあげると汗を弾きながら形を変えた。




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