図書室で、恋。


私、何聞いてるんだろう。

悠太は怪我人。今はそんなことを聞いている場合じゃない。


「ごめ…何でもない。帰ろう、足痛い?」

「え…あ、ま、そりゃね。」

「2ケツ…私が漕ぐ。」

「は、馬鹿かお前。俺乗せて漕げるわけねぇだろ。荷物だってあんだぜ?」

「大丈夫。」

「いや、無理だってば。母さん呼ぶから…「いいから!!」」


私の声が響き渡った。

自分でもその声の大きさにハッとする。

何イライラしてるの私。まるで自分の感情がコントロールできていない。


「お、おばさん呼ぶくらいなら、チャリ置きになんで来たの?」

私はさっきまでとは打って変わった明るい声を出す。


「あー…確かに。確かにそうだな。」

「ふっ…」

私は悠太の様子に笑った。
本当にコイツは馬鹿。何、自分でも納得しながら驚いてるのよ。


そこは冗談でも…たとえ冗談でも…

陽彩が待ってるからって、そう言って欲しかったよ。


私はポツポツと沸きあがる感情を押し込んで、自転車を押し出した。

「ほら!帰るよ!」

とびきりの笑顔を悠太に見せて。


< 19 / 34 >

この作品をシェア

pagetop