愛を知る日まで




初めてだった。


こんな人生を歩んで来ながらも一度も思ったことは無かったのに。


初めて俺は『死にたい』と、思った。



きっと、真陽に恋した事で心が人並みに弱くなったのかもしれない。



もうこんな人生終わらせていいんじゃないかと。


俺が死んだとこで誰も悲しまないのに、と。


もう


意味も分からず生きていくのが辛いと思った。



蝉の声を聞きながら、俺はゆっくりと床に横たわって目を閉じた。


このままもう目覚めなければいいのにと思いながら。








傾きかけた陽が部屋に射し込み、閉じた瞼越しにさえ眩しいと感じて目が覚めた。


残念ながら死ぬことは叶わなかったようだけど、随分長く寝ていたようで時計の針は間もなく18時を指そうとしている。



フローリングの床で寝てしまったせいで痛む身体を起こしたと同時に、部屋のチャイムが鳴った。




< 63 / 227 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop