『短編』秘密


君の高山先生に対する不満には答えず、「どこがわからないの?」と話を先に進めようとした。

ところが君はいっこうにカバンから教科書やノートを取り出そうとしない。

それどころか、窓際まで歩いて行って、もたれながら悩ましげなため息までついた。

「先生の白衣姿は、なんでエッチに見えるんだろう」

「は?なに言ってるの?」

「言葉のとおりだけど」

「そうじゃなくて。わからないことがあるから来たんでしょ?」

「そうだよ」

「だったら、教科書出しなさいよ」

「教科書なんて必要ないからさ」

君は一歩ずつ私に近寄る。

詰め寄ると言った方がいいか、なにか思いつめた表情の君に後ずさりしてしまった。

< 4 / 12 >

この作品をシェア

pagetop