『短編』秘密
君の高山先生に対する不満には答えず、「どこがわからないの?」と話を先に進めようとした。
ところが君はいっこうにカバンから教科書やノートを取り出そうとしない。
それどころか、窓際まで歩いて行って、もたれながら悩ましげなため息までついた。
「先生の白衣姿は、なんでエッチに見えるんだろう」
「は?なに言ってるの?」
「言葉のとおりだけど」
「そうじゃなくて。わからないことがあるから来たんでしょ?」
「そうだよ」
「だったら、教科書出しなさいよ」
「教科書なんて必要ないからさ」
君は一歩ずつ私に近寄る。
詰め寄ると言った方がいいか、なにか思いつめた表情の君に後ずさりしてしまった。