純白のキルケゴール

3



―やめてくれ!―


夜を敷いた暗がりの中、白髪の男は男を失った様に、声を震わせた。


ここは、一件のビルの中。


既にひけ腰なこの男は、確か中学生の娘がいる父親で、普通のサラリーマン。


つまり、どこにでもいる普通の男。


―ああ、もう手間かけさせないでよ~―

私は、半笑いして男に近づいた。


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